役に立つ法律の情報・実用法学-行政法、民法など、大学課程の法学の勉強

概念

 

社会生活は、人との共同関係を前提として成り立ちます。
したがって、基本的人権を無制限に認めるわけにはいきません。

 

そこで、日本国憲法は公共の福祉による制約を認めています。
公共の福祉とは、人権相互の矛盾・衝突を調整するための実質的公平の原理をいいます。

 

つまり、人権は他の人権との関係で制約を免れませんが、それは公共の福祉により公平に調整されます。公共の福祉が人権の濫用を制御するイメージです。

 

公共の福祉 

 

 

 

内容

 

 

憲法11条に、人権を「侵すことのできない永久の権利」としています。
しかし、これは人権が無制限という意味ではありません。
なぜなら、憲法12条では、国民は人権を「常に公共の福祉のためにこれを利用する権利」を負うとし、13条の人権は「公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」としています。

 

つまり、全ての人権は、他人の人権侵害を防止するために内在的制約を受けるとされます。
もっとも、憲法13条で全ての人権には公共の福祉の制約があるとしながら、22条1項(居住移転や職業選択)・29条2項(財産権)でも改めて公共の福祉の制約について言及しています。これは、経済的自由権には社会経済政策を実現するために、内在的制約に加え、政策的制約が課されることを意味しています。

 

内在的制約 

 

 

 

内在的制約

 

内在的制約とは、各人権の共存を維持するための、必要最小限度の人権制約です。自由国家的公共の福祉とま言われます。

 

例えば、自分は土地に建物を建てたいと考えています。しかし、その土地の上にどのような建物でも建てていい訳ではありません。なぜなら、周りに住む人の様々な利益(日照、安全、通信の傍受など)を害する恐れがあるからです。
したがって、自分の利益だけでなく他の人の利益も考える必要があるため、公共の福祉により今回の場合は建築基準法により制約されます。

 

つまり、自分の人権だけでなく他の人の人権も尊重しなければなりません。これを、法律によって人権を制約することを内在的制約といいます。

 

 

政策的制約

 

政策的制約とは、福祉国家誕生に伴って生まれた政策的な制約です。なぜなら、形式的平等のみを進めていくと社会的弱者等が生じます。こういった不都合を修正するために、社会的弱者の経済的保護や多くの国民の生活水準の向上を図るようにする人権制約です。

 

例えば、営業の自由が与えられているため、経営者が大規模なモールを新しく作りたいと考えます。この場合、零細商店街ばかりが集まる地域に出店できません。なぜなら、近くに色んな物が揃うモールができると優先的にお客さんはモールの方に流出します。したがって、商店街の商店主はこれから商売をして暮らしていくことが困難になります。このように、多くの人が可哀想になることを防止するために、今回の場合は大店法により人権制約されます。

 

つまり、1つに利益が集中して多くが損害を被るような、社会的バランスが崩れることを未然に防ぐ必要があります。これを、法律によって人権を制約することを政策的制約といいます。

 

 

学説

 

公共の福祉は抽象的なものであり、国家により行き過ぎた人権制約が行われる危険があります。そこで、実際に公共の福祉福祉とはどのようなものなのかが問題とされています。

 

 

一元的内在制約説(通説)

 

現在、一元的内在制約説が公共の福祉の通説です。公共の福祉は人権相互の矛盾・衝突を調整するための実質的公平の原理であり、すべての人権に必ずあると捉えます。公共の福祉による制約は、以下の場合にどれくらいの規制を認めるかを定義しています。

 

自由権相互の矛盾・衝突をする場合は、「必要最小限度」の制約を認めます。
社会権を実質的に保障するために自由権を規制する場合は、「必要限度」での規制を認めようとするものです。

 

 

一元的外在制約説

 

基本的人権の全ては、憲法12条・13条を根拠として制約されると考える立場です。つまり、公共の福祉を人権の外にあって人権を制約する一般原理と捉えます。この学説の公共の福祉は、憲法22条1項・29条2項の公共の福祉は重要な意味はないとされます。
この学説に対する批判として、法律による人権制約が容易に肯定されるのではないかが問題とされます。

 

 

内在・外在二元的制説

 

公共の福祉による制約が許されるのは、憲法22条1項・29条2項等の経済的自由権と社会権だけであると捉えます。また、12条13条を単なる訓示的規定と考え、この条文にある公共の福祉は人権制限の根拠にならないとされます。
この学説に対する批判として、憲法122条・13条を単なる訓示的規定とすると、憲法13条を新しい人権を根拠づける規定と考えることができなくなる恐れがあります。また、知る権利のように自由権的性格と社会権的性格を持つ権利はどのような制約に服するのか不明となる問題を抱えます。

 

 
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