役に立つ法律の情報・実用法学-行政法、民法など、大学課程の法学

行政行為の効力

 

国民に到達した時点で発生する行政行為には、特別な効力があるものとされています。
その代表的なものが、拘束力、公定力、不可争力、不可変更力、執行力、などです。

 

 

拘束力

 

拘束力とは、行政行為が行われることによって生じる効果のことです。
つまり、行政行為の内容次第で国民や行政庁を拘束する効力のことをいいます。

 

例えば、
課税処分の告知→税金を納付すべき義務
営業停止命令の告知→営業を停止すべき義務
自動車の運転免許証の交付→適法に運転できる
建築確認の告知→適法に建築できる

 

などが挙げられます。

 

 

公定力

 

公定力とは、簡単に言うと行政行為がたとえ違法であっても、権限のある行政庁または裁判所が取り消すまでは、有効なものとして扱われるという効力です。
ただし、違法が重大かつ明らかな場合は当然無効となります。

 

詳しくは次の公定力で説明します。

 

 

不可争力

 

不可争力とは、違法な行政行為によって権利利益を侵害された者であっても、法定の不服申立期間または出訴期間を経過すると、もはやこの行政行為の取消しを求めることができなくなる効力です。

 

つまり、国民が行政行為に不服があっても、一定期間が経過すると、その行政行為の効力を裁判所で争うことができなくなります。
なお、行政行為が無効の場合は不可争力はなく、行政行為が無効であると主張できるときは、一定期間が過ぎても、いつでも訴訟によって無効の確認を提起することができます。また、行政機関が行為を取り消す場合にも不可争力はありません。

 

行政機関は、違法な行政行為をいつでも取り消すことができます。

 

予備知識として、不服申立期間と処分の取消しを求める訴訟の主訴期間について説明します。
不服申立期間は、原則として処分があったことを知った日の翌日から60日以内、処分があった日の翌日から1年以内に不服審査を申し出なければいけません。不服申立期間は、行政不服審査法で詳しく説明します。

 

そして、処分の取消しを求める訴訟の主訴期間は、原則として処分があったことを知った日から6ヶ月以内、処分があった日から1年以内に行わなければなりません。主訴期間は行政事件訴訟で詳しく説明します。

 

存在理由

 

なぜ不可争力はあるのでしょうか?
その理由として、もし国民がいつまでも行政行為について不服を申し立てられるのでは、行政上の法律関係の法的安定性を図ることができなくなります。よってその理由のために、一定期間が経過すると、行政行為の効力を裁判所で争うことができなくなります。

 

 

不可変更力

 

不可変更力とは、行政行為のなかでも紛争裁断行為については、たとえそれが違法であっても、権限の行使を行った行政機関自身がいったん判断を下した以上は、自らその行為を取り消したり変更したりすることはできない、という効力です。
つまり、行政行為のうち紛争裁断行為については、行政機関が判断を下した以上、自ら取消しや変更はできない、ということです。

 

ちなみに紛争裁断行為とは、審査請求に対する裁決、異議申立に対する決定など、紛争に対してはっきりと判断を下して、その紛争を終わりにする行為ことです。
もし不可変更力がなければ、いったん判断が下されて紛争が終わったとしても、その者は安心できません。

 

そのような不安定なことを防ぐために、行政機関側からは取消し、変更ができないように不可変更力によって制限されました。

 

 

不可争力と不可変更力の違い

 

不可争力は、行政機関が自ら取消・撤回することができますが国民からはそれを提起することはできません。
一方で、不可変更力は行政機関が自ら取消・撤回することができずに国民がそれを提起することができます。

 

つまり、不可争力と不可変更力の違いは行政機関(不可争力)、国民(不可変更力)が取消・撤回できるか、ということです。

 

 

執行力

 

行政行為によって課せられた義務を国民が履行しない場合は、本来執行するのは裁判所です。
しかし、裁判所には時間と費用がかかるため、行政行為には行政庁が自らの判断により義務者に対して強制執行して、義務内容を実現する力が与えられました。

 

つまり、執行力とは国民が義務を果たさないときに、行政庁が裁判所の判決を得ずに自らの判断で強制執行することができる、ということです。
ちなみに執行力は、自力執行力ともいわれます。

 

この執行力が存在する理由として、行政の目的を迅速に確実に実現すること、が理由として挙げられます。

 

 
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